10. わかってくれる人
店の主人が、入り口に「子犬売ります」の看板をかけていた。
子供たちは看板を目ざとく見つけるものだ。すぐに小さな男の子が聞きに来た。「子犬はいくらですか?」
店主は答えた。「30ドルから50ドルってとこだな」。
男の子はポケットに手を入れ小銭を出した。「2ドル37セントしかないや。子犬見せてもらえる?」
店主はにっこり笑って口笛を吹いた。犬小屋からレディーという名前の店主の犬が店内に走り出て来た。レディーの後ろからは小さな子犬が5匹付いて来た。
5匹の子犬のうち1匹が目立ってよたよたと遅れを取っていた。男の子はよろけているビリの子犬にすぐに目をつけた。「その子犬どうかしたの?」
店主は、子犬が生まれたとき獣医が言ったことを説明した。腰骨に異常があるために一生脚を引きずって歩くことになるだろうと。
男の子はひどく興奮して言った。「ぼく、その子犬買いたい!」
店主は言った。「いや、それはないだろう。もし、ほんとにその子犬がいいんだったらきみにあげるよ」。
男の子はむっとした。彼は店主の目をまっすぐに見て言った。「あげるなんて言わないで。この子はどこを取っても他の子と同じ値打ちがあるんだもの。だから、ぼく定価で買うよ。ほんとは、今は2ドル37セントしか払えないんだけど…。毎月50セントずつ払うよ。全部払い切ってこの子が完全にぼくの子犬になるまで払うよ」。
店主は反対した。「よく考えた方がいい、坊や。この子は走ったり跳んだり、他の子犬のように遊んだりできないんだよ」。
男の子はうつむいてズボンの裾をたくし上げ、左脚をむき出しにして見せた。男の子の左脚はひどくねじ曲がっており、補強金具で支えられていた。彼は店主を見上げて言った。「ほら、ぼくもうまく走れない。この子犬には分ってくれる人が必要なんだ」。
店主は下唇を噛み、目をうるませた。そして、ほほえんで言った。「この子犬たちが一匹残らずみんな、きみみたいな子に飼われてほしいな。心からそう願うよ、坊や」。
人生で、自分が何者であるかは大した意味がありません。大切なのは、あるがままの自分を、だれかが評価し、無条件に受入れ、愛してくれるかどうかです。
【聖書から】
疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。(マタイ11:28)
ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。(コヘレト4:9)
虐げられている人に
主が砦の塔となってくださるように
苦難の時の砦の塔となってくださるように。
主よ、御名を知る人はあなたに依り頼む。
あなたを尋ね求める人は見捨てられることがない。
(詩編9:10-11)