神父様からのメッセージ

平和を祈る

 誰もが平和を願っているにもかかわらず、地球上のどこかで常に民族紛争や戦争が絶えません。これは人間の世界の矛盾した現実です。この悲しい現実のために亡くなり、心身ともに苦しんでいる人たちがどんなに多いことでしょう。

 紛争や戦争の原因はどこにあるでしょうか。私たち人間の心にあるのではないでしょうか。エゴイズム、貪欲、物欲、傲慢さ、復讐心、権力欲などに起因しているのではないでしょうか。従って、まさに平和への道のりは私たち人間の絶えざる改心を要する救いの道と結ばれています。

 紛争や戦争は人間の敗北と言われています。まさに、弱肉強食の砂漠の世界に成り下がってしまう人間の世界となります。ところで、平和とはどのような状態を指すのでしょうか。平和とは、単に紛争や戦争が不在の状態を意味するのではないと思います。ここでイエス様のお言葉が思い出されます。

 『わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える。わたしはこれを、世が与えるように与えるのではない』と(ヨハネ福音書14,27)。

 イエス様は、ご自身が与える平和と世が与える平和とを区別なさいます。当時は「pax romana」(ローマの平和)の時代でした。軍事力によって保たれていた平和でした。そこで、イエス様はそれとは違った平和を与えるとおっしゃいます。イエス様が与える平和とは、赦しと和解、復讐心の放棄、人の諸権利を尊重するところから生まれる平和です。やはり、一人一人の人間の心の改善なしでは、まことの平和が人間の世界を訪れて来るはずがありません。

 連帯感(物の分かち合い)、思いやりの心、共感できる心、赦し合う心、平等の意識などがまことの平和を作る道ではないでしょうか。

 いわゆる、勝ち組と負け組みの競争原理が支配している社会、そこに必ず被害者が多くいる以上、まことの平和がその社会を訪れているといえるでしょうか。